まさかとは思うが

祖父が大好きな祖母を残し、一人、あの世へ行ってしまった。 祖母は認知が進んでおり、祖父があの世へ行ってしまったことを分かっていない。 祖父の遺産を整理していると、カギが見付かった。 私、「このカギなんだろう?」 父親、「分からんな」 母親、「何か書いてあるわよ」 カギに付いていたプレートには別荘と書いてあるのだが、 私、「お爺ちゃん、別荘を持っているの?」 父親、「別荘なんて聞いたことないな」 母親、「私も聞いたことがない」 祖父が別荘を持っていたか知る唯一の手掛かりは祖母なのだが、認知が進んでいる祖母は外の景色を見ており、別荘のことは聞いても無反応。 祖父と古くから付き合いのあった人に別荘のことを聞いてみると、祖父が別荘を持っていたことまでは分かったのだが、どこにあるのかまでは分からない。 祖父母が映るアルバムを整理していると、別荘と思われる写真を発見、それを手掛かりに別荘の場所を調べた。 父親、「母さん、ここが何処だか分かる?」 祖母、「・・・」 父親、「父さんと一緒に行った別荘じゃない?」 祖母、「・・・」 母親、「無理よ」 アルバムの写真はカラー、写真の日付けを見て父親は驚いた、なぜなら、10年前に撮られた写真だったから。 10年前なら、まだ、別荘が残っているかもしれない。 場所が分かった私達は、祖母と一緒に別荘があると思われるところへ行ってみた。 草はボーボーに生えていたが、別荘は残っていた。 父親が遺産の中から見付かったカギを別荘の玄関ドアに差し込んだのだが、鍵穴が錆び付いており鍵は回せなかった。 別荘は最寄り駅から車で1時間は掛かる田舎にあるのだが、カギの業者さんに連絡したらスグに来てくれた。 別荘の持ち主であることを証明すると、業者さんはスグに取り掛かり、ものの10分足らずで別荘のカギが開いた。 父親、「母さん、ここを覚えてる?」 祖母、「・・・」 一瞬、頭をよぎったのは、祖父が祖母にナイショで購入した別荘かもしれないということ、だとするとマズイ。 母親、「どうする?」 私、「お婆ちゃんが、指差しているよ」 母親、「母さんどうかしたの?あっちへ行ってみたいの?」 祖母が指差す方へ行ってみると、祖父と祖母が笑顔で映る写真が壁に掛かっていた。

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